鉄道会社の働き方改革の効果と今後の展望
今回は、働き方改革についてです。
昨今、過労死という言葉が一般的になり重大な問題であることから国を上げての改革に乗り出すこととなった。
安倍内閣が2016年に打ち出したこの施策により今後、日本社会はどのように変わっていくのだろうか。
私の働いていた鉄道会社の実態を交えながら書いていこうと思う。
働き方改革とは
端的に書くと、『一億総活躍社会を実現するための改革』である。
全ての国民が理想とするような働き方を取捨選択でき、それぞれがワークライフバランスを保ち仕事と生活を調和した生き方ができる国づくりのことである。
働き方改革の課題
・長時間労働の是正
・労働人口不足の解消
・雇用形態による格差の是正
の3点が挙がられる。
では安倍内閣がこの改革を提唱し私たちの生活は変わったのだろうか。
これから変わるのであろうか。
大手企業ではどういった取り組みを行っているのか。
私が働いていた鉄道会社でのことについて触れていこう。
・長時間労働の是正
鉄道会社というと言っても駅員や乗務員以外にも設備のメンテナンスの社員や経理や事務、また都市開発やIT事業など職種は多岐に及ぶ。
実際にホワイトと呼ばれる部署は駅員や乗務員のみであり、その他の部署で働く人たちは長時間労働を強いられている。
一時期私の働いていた設備メンテナンスの職場では月平均30時間ほどの残業があったとされている。
あれ、そんなもんなの?思ったより少ないじゃん。と思ったことだろう。
これは会社側が把握しているということになっている残業時間であり実際の残業時間ではない。
日勤の日であればきちんと残業時間は給与に反映される。
しかし夜勤の日はどうだろうか?
メンテナンス部門の社員の勤務時間はこんなかんじだ。
08:30頃 出社
09:00 勤務開始
12:30 昼休憩
13:30 午後の勤務開始
19:30 休憩・食事・仮眠
23:30 夜間作業開始
05:30 勤務終了
このようにおおむね21時間ほど拘束され、その中で2日分の労働時間を働くことになる。
しかし実際に夜間に現場での作業が終わったからと言ってそのまま帰宅というわけにはいかないのが現状である。
点検が終わればその報告書を作成する。
また点検の結果に異常があれば工事や修繕の計画書を作成。
計画書を作ったら施工会社と打ち合わせを行う。
施工日が決まったら実際に立ち合い予定通り作業が終わったことを確認し報告書を作成。
というわけで、大まかに上記の無限ループをするのがメンテナンス部門の仕事である。
慢性的な長時間労働が日常化している。
また本社なんかはもっときつく何かちょっとした事故でも起きれば休日でも出社しなければならない。
よく学生時代の友人なんかと話をしていると下記のようなことを言われる。
『鉄道会社で働いてるなんていいね』
『給料も悪くなさそうだし、安定してそうだし』
『仕事もそこまで大変じゃなくてしっかり休みもとれそうだよね』
『電車乗り放題でしょ?最高じゃん!』
よく言われるこのようなことは本当なのだろうかと気になる方も多いであろうのでそれぞれ解説していこう。
・鉄道会社で働いているなんていいね
別にいいことなんてそんなないです。
いわゆるブラック企業なんかよりはいいかもしれない。
でも結局は日本企業だし、別にこれといって特に普通だよ。
・給料も悪くなさそうだし、安定してそうだし
給料は正直言って普通で良くはないです。
大卒として働く給料水準としては低いです。
インフラという性質上安定はしているかもしれないが、
老朽化による設備投資で最近は鉄道業界の景気はよろしくないし
赤字路線なんかを多く抱える会社だと大変だと思う。
・仕事もそこまで大変じゃなくてしっかり休みもとれそうだよね
仕事が大変かどうかは完全に所属する部門による。
駅や運転士といった営業系の職場はきちんと勤怠管理がなされているのでホワイトである。
しかしそれ以外の部門においては慢性的な長時間労働が日常化しており、けしてホワイトとは言えない。
休みは多くはないが、非番のある職場だと確かに体感的には多く感じることだろう。
しかし休日出勤が当たり前となっている職場も多いのが実情である。
・電車乗り放題でしょ?最高じゃん!
はい。電車は乗り放題です。
乗り放題だけど別にそんなに乗りませんよ。
入社して間もないころは楽しくて乗る人も多いみたいだけど、行くとこなんて限られているし乗らないね。
乗り鉄には良い環境かもね。
ただ、都営や市営といった準公務員のような場合は乗り放題ではない模様。
インフラといった性質上、業種としての安定性は確保されているのは間違いない事実である。
そもそも日本という国は大手企業や国策企業を潰すようなことを基本的には行わない。
・労働人口不足の解消
生産年齢人口の減少に歯止めがかからない日本において、これを解消するには生産性の向上しかない。
しかし日本の労働生産性は主要先進7か国の中で最下位であり低水準である。
それはなぜなのか?
日本においては生産性を向上することよりも長時間働くことを美徳としてきた背景がある。
鉄道会社という古くからの風土が根強い業種においては効率化をうたってはいるものの遠く及ばないのが実情である。
・雇用形態による格差の是正
鉄道会社で働く人というと多くの人がまず思いつくのが駅員や運転士であろう。
運転士においては100%が正社員である。
しかし駅員なんかだと多くの企業が契約社員やアルバイト職員を採用している。
同じ業務を行い、仕事量も変わらないにもかかわらず雇用形態が異なるがために賃金も異なっている。
またJRのグリーンスタッフは契約の更新回数が定められており、
その期間内に社員登用試験に合格することができなければ有無を言わさず辞めざるをえない。
社員を使い捨ての駒としか考えていない状態である。
少しでも安く労働力を確保したいという企業側と、鉄道会社でどうしても働きたいという労働者側のニーズは確かに一致している。
だが社員登用を目指して契約社員という働き方をする人からすれば、経営側が低賃金で雇える使い勝手の良い駒だと思っていることを考えると許しがたいことだろう。
国を挙げての働き方改革はまだ始まったに過ぎない。
これから様々な企業にメスが入っていくことを望んではいるが、なかなか上手くいくとは思えない。
もっと働きやすい国に、人々が幸福と思える世の中になっていくことを私は望んでいる。